業多姫いろどりつづり （文庫）の通販ならネットオフ！

温かかった。春の陽射しも、寄り添う互いの体温も。憶えている？と、鳴は颯音に問いかける。「この『故郷への旅』に出ようとあなたが告げた日の約束」明るい浅藍の空と、それよりも深い色をした水。颯音の故郷の海を見つめながら、鳴は訊ねる。颯音は、頷く。傍らの鳴の温もりを感じながら。憶えている、と。赤く色づき始めた楓の葉が舞う中で交わした約束。小さな命が、その腕の中にあった日。夏と秋と初冬―巡る季節を二人は思い出す。幾つかの出会いと別れを。再び出会うであろう、懐かしく優しい人々のことを。鳴と颯音、二人の軌跡を綴る、初の短編集。

目次 ：撫子色の約束；夏つばきの白い花ひとつ；紅葉が手の中にいた秋；黒髪に霜を置くまで；萌黄野の花に春潤う；早緑月を待つ冬陽；碧らむ雪

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