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夏目漱石と村上春樹は、ともに「国民作家」というべき、日本を代表する作家である。従来、二人の作品は「個人」の側面から語られることが多かった。しかし、彼らが国民作家である最も大きな理由は、ともに自身が生きている時代社会のあり方とその行方を、作品に盛り込みつづけたことにある。そもそも、漱石と春樹には、時代に対する意識とその表現方法に共通項が多く見られる。本書では、その観点から作品を読むことで、彼らが日本をどのように見ていたのか、明治から現代にかけて、この国で形を変えて繰り返されるものと、新たに生まれてきたものを見ていく。
目次 :第1部 二人の出発点―それぞれの時代への眼差し(「真」を捉えようとする表現(漱石)―『吾輩は猫である』『坊つちやん』;混在する時間 六〇年代と七〇年代(春樹)―『風の歌を聴け』『1973年のピンボール』);第2部 大きな物語の後で―支配される人びとの姿を描く(「個人主義」と韓国併合への反感(漱石)―『それから』『門』;情報に支配される現代(春樹)―『羊をめぐる冒険』);第3部 「空っぽ」の世界―二人にとっての“ポストモダン”とは(「淋しさ」に至る“勝利”(漱石)―『こゝろ』;「空っぽ」の人物たち(春樹)―『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『海辺のカフカ』);第4部 未来と過去を行き来する物語―二人の込めた“日本”への願いとは(“未来”からの眼差し(漱石)―『こゝろ』『道草』『明暗』;「心」のつながりと「物語」への期待(春樹)―『アフターダーク』『1Q84』)
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