- 電子書籍がなぜ記憶に残りにくいのかわかる
- 電子書籍が記憶に残りやすくなる方法がわかる
- 電子書籍が向いているジャンルがわかる
「電子書籍と紙の本ってどちらがいいの?」
「電子書籍って記憶に残りにくいの?」
と疑問に思っていませんか?
情報を得たい場合は電子書籍でもよいですが、知識を得たい場合は紙の本が記憶に定着しやすいです。
しかし、電子書籍にも記憶に残りやすくする方法があります。
電子書籍が記憶に残りにくい理由や改善方法、電子書籍と紙の本のそれぞれのおすすめジャンルを紹介します。
どちらの方法で本を読んだらよいのか迷っている人は、ぜひ参考にしてください。
研究論文から判明した電子書籍が記憶に残りにくい3つの理由
タブレットやスマートフォンで電子書籍を読む人が増えています。
持ち運びが簡単で、ちょっとした待ち時間やすき間時間に本を読めるため便利なアイテムです。
しかし、電子書籍は記憶に残りにくいという話も聞きます。
ここからは、電子書籍が記憶に残りにくい理由を、研究論文を交えて説明していきます。
- 電子書籍は長期記憶に不向き
- 電子書籍は睡眠の質を低下させる
- 電子書籍は指先への刺激が弱い
電子書籍は長期記憶に不向き
2012年に小林亮太氏らが発表した研究では、36人の学生に対してタブレット端末(iPad)と紙媒体の両方で文学的・説明的文章を読ませた場合の記憶や理解度を評価する比較テストがおこなわれました。
要約すると以下の内容になります。
- 読みやすさはタブレット端末と紙媒体の差はない
- 説明的文章の場合、読む速度や記憶については差が見られる
- 文章の理解は紙媒体が有利
iPadを電子書籍に置き換えてもよいでしょう。
説明的文章の場合は紙媒体の方が記憶に残りやすいため、勉強など「知識を得たい」場合は紙の本がおすすめです。
読みやすさについては差がないため「情報を得たい」場合は、電子書籍を利用すると便利でしょう。
参考:表示媒体が文章理解と記憶に及ぼす影響-電子書籍端末と紙媒体の比較-
電子書籍は睡眠の質を低下させる
電子書籍を寝る前に読むと、よく眠れず翌朝もすっきりと起きられないことがわかりました。
2014年にBBCのネットニュースで掲載された記事では、ハーバード大学医学部チームが睡眠前に紙の本を読んだ場合とバックライト付きの電子書籍を読んだ場合を比較しました。
結果は、以下のとおりです。
- 電子書籍を読むと睡眠の質の低下と翌朝の疲れを引き起こす
- 就寝前に電子書籍を読むと、睡眠ホルモンであるメラトニンの生成が減少する
- 体内時計に影響を及ぼす
電子書籍を寝る前に読むと、良質な睡眠を取りにくくなります。
睡眠不足に陥ると、記憶に関係する脳の海馬に悪い影響を与え、記憶力の低下につながります。
電子書籍の使用は、夕方以降はなるべく避けるようにしましょう。
参考:E-books ‘damage sleep and health,’ doctors warn
電子書籍は指先への刺激が弱い
電子書籍は手軽に持ち運べる一方、本を読んでいる感覚が乏しくなり記憶に残りにくいのではと考えた人もいます。
2008年にアン・マンゲンは読書における触覚と没入感についての論文を発表しました。
結果は以下のとおりです。
- 読書は多感覚活動であり、指や手を器用につかう必要がある
- 印刷された本のページをめくるのは触感が豊かなのに比べ、電子書籍をクリックしてスクロールするのは触覚が乏しい
- 電子書籍の画面上の刺激が足らないと、興味や集中力を失う
- 印刷された本のページを読む際はより没入感が得られる
マンゲンは印刷された本を読む際の多感覚活動が、興味や集中力に必要であると述べています。
電子書籍の方が触覚への刺激が乏しく、没入感が得られにくいために記憶にも残りにくいと考えられます。
参考:Hypertext fiction reading:haptics and immersion
その他の電子書籍が記憶に残りにくい3つの理由
ここまでは、電子書籍の記憶に残りにくさに関わる研究内容をお伝えしてきました。
他にも考えられる要因を説明していきます。
- 電子書籍はアプリの通知が集中を妨げる
- 電子書籍は費用回収意欲が下がる場合がある
- 電子書籍の操作に慣れていない
電子書籍はアプリの通知が集中を妨げる
電子書籍の専用端末で本を読んでいれば、通知などが来ないため集中して読書できます。
しかし、スマートフォンや一般的なタブレットの場合、さまざまな通知がきます。
結果として、通知が来ているアプリを見るなど読書以外のことをする可能性が高くなるでしょう。
そして、集中して読書した場合と比較して内容の理解が劣り、記憶に残りにくくなってしまいます。
電子書籍は費用回収意欲が下がる場合がある
電子書籍は紙の本を購入した場合と比較して費用回収意欲が下がり、結果的に内容が記憶に残りにくくなる可能性があります。
費用回収意欲が下がる原因として、以下の内容が考えられます。
- 電子書籍は欲しくなったらすぐに手に入ってしまう(わざわざ買いに行く必要がない)
- 支払いもオンライン決済で済むため、お金を払った感覚がない
電子書籍は紙の本と比べて手に入れるために時間や費用をかけている感覚が薄く、読む意欲が低下して記憶に残りにくくなる可能性があるのです。
そのような場合は、電子書籍も紙の本と同様の価値があると改めて認識しなおす必要があるでしょう。
電子書籍の操作に慣れていない
今まで紙の本を読んでいた人は電子書籍に慣れていないため、使いにくさを感じる場合もあるでしょう。
スマートフォンで読んでいると、字が小さくてよく見えなかったり、大きくするとたくさんスクロールしなければならなかったりとさまざまなストレスがあります。
スムーズに読めないために、記憶に残りにくくなっている可能性があります。
電子書籍が記憶に残りにくい場合の5つの改善方法
ここまで、電子書籍が記憶に残りにくい理由を紹介してきました。
それでは、どうしたら読んだ内容が記憶に残りやすくなるのでしょうか。
ここからは、電子書籍が記憶に残りにくい場合の5つの改善方法について、解説していきます。
- 寝る前に電子書籍は利用しない
- アプリの通知をオフにする
- 電子書籍を専用端末で読む
- 画面の明るさや文字の大きさを調整する
- 電子書籍の操作に慣れる
寝る前に電子書籍は利用しない
電子書籍はスマートフォンやタブレット、専用端末は、いずれもブルーライトを発しています。
ブルーライトは目の疲れや、体内リズムの乱れを招き、脳が睡眠モードになりにくく睡眠サイクルが乱す可能性があります。
ブルーライトカット専用フィルムなどを貼ったとしても、光を100%カットできるわけではありません。
体内リズムを正常に保つためにも、寝る前の最低一時間は電子書籍の利用を控えましょう。
アプリの通知をオフにする
電子書籍を使用している間は、アプリの通知をオフにしましょう。
読書中にアプリの通知があるとそちらが気になったり、アプリを開いたりしてしまいます。
そして、読書が中断され、内容が記憶に残りにくくなります。
アプリの通知は以下の手順でオフにできます。
Apple端末 | 設定→通知→オフ |
Android端末 | 設定→アプリと通知→オフ |
また、一括でアプリをオフにしたい場合は設定画面やトップ画面から以下のモードを採用しましょう。
Apple端末 | おやすみモードを使用する |
Android端末 | サイレントモードを使用する(メーカーで異なる) |
トップ画面で上下にスワイプすると、Apple端末は『コントロールセンター』が表示され、Android端末は『クイック設定パネル』が出てくるため、簡単に変更可能です。
電子書籍を専用端末で読む
スマートフォンやタブレットでの電子書籍の読みにくさを感じている人には、専用端末の使用をおすすめします。
電子書籍を読む際に専用端末を利用すると、内容が頭に入りやすくなります。
理由は以下のとおりです。
- ブルーライトの光が少ない
- 他のアプリの通知がこない
- 専用端末のため読書に集中できる
電子書籍の専用端末はブルーライトを抑えて設計されています。
電子ペーパーという全くブルーライトを発しないものもあるため、目が疲れにくいです。
専用端末は他のアプリなど入れないため、通知が来て読書が中断されたりしません。
また、専用端末は紙の本と同様、手に取れば読書をする気持ちになり集中しやすくなります。
専用端末は色々な種類があるため、自分のお気に入りを見つけて使用しましょう。
画面の明るさや文字の大きさを調整する
紙の本と違い、電子書籍は画面の明るさや文字の大きさが調整できるのがメリットです。
文字が小さくて読みにくいと思っている人は、端末そのものの設定を変えてみるとよいでしょう。
ストレスを感じながら読書をしていてもなかなか頭に入らず、記憶にも残りにくいです。
周囲の明るさや環境、状況に合わせて端末を設定すれば、内容は記憶に残りやすくなります。
電子書籍の操作に慣れる
紙の本ばかり読んでいた人は、電子書籍の操作に慣れることから始めましょう。
電子書籍はスクロールするだけでページが変わるなど、紙の本と扱い方が異なるため戸惑う人もいます。
例えば、最初は長編小説などページ数が多いものから始めるのではなく、エッセイ集や短編集などから始めるとよいでしょう。
使い続けていけば徐々に慣れ、読みやすくなっていくでしょう。
電子書籍を記憶に残す5つの方法
電子書籍の記憶の残りにくさについて説明してきましたが、工夫次第で改善できます。
これらを実践すれば、頭への残り方が変わってくるため参考にしてください。
- 目次を見て中身を予想する
- 書いて覚える
- スクリーンショットを繰り返し読む
- 音声で覚える
- 読んだ内容を他人に教える
目次を見て中身を予想する
興味のない本を読まなくてはいけない場合は『目次を見て内容予想』をしてみましょう。
本文を読む前に目次に目を通し、どのような内容がかかれているのか予想します。
その予想をもとに、本文を読み始めます。自分が予想した展開なのか、まったく違った方向性で書かれているのか、興味が増し記憶に残りやすくなります。
書いて覚える
個人差はありますが、書くことで頭に入りやすくなる人がいます。
手を動かして書くことで、触覚と視覚(見ること)を両方使うため、情報生理ができ効果的に暗記ができるでしょう。
書き続けると「手が覚える」という感覚を掴める場合もあります。
スクリーンショットを繰り返し読む
どうしても記憶に残したい、内容を頭に入れたいと思うなら、スクリーンショットに撮って何度も見返すのが効果的です。
電子書籍をスクリーンショットする方法は以下のとおりです。
Apple端末の場合 | サイドボタンとホームボタンを同時に押す |
Android端末の場合 | 電源ボタンと音量小ボタンを長押しする |
スクリーンショットなら端末にデータとして保存しておけるため思い出したときにいつでも確認でき、繰り返し情報に触れられるため記憶の定着に役立ちます。
音声で覚える
電子書籍を音声で聞いて、視覚だけでなく聴覚も使って覚えるのもよいでしょう。
スマートフォンやタブレット、専用端末には『読み上げ機能』が搭載されており、文章の内容を音声で読み上げてくれます。
電子書籍を読んでいて目が疲れる人や読むこと自体が苦手な人は、積極的に読み上げ機能を利用してみましょう。
自宅や電車内だけでなく、散歩や駅までの道のりなどでイヤホンを利用して電子書籍の内容の把握ができます。
読み上げ機能の設定方法は以下のとおりです。
Apple端末の場合 | ①設定を選択 ②一般→アクセシビリティ→スピーチ→画面の読み上げを選択 ③画面の読み上げをオン ④電子書籍を開く ⑤画面上から下に2本指でスワイプ ⑥読み上げ開始 |
Android端末の場合 | ①設定を選択 ②ユーザー補助→TalkBackを選択 ③TalkBackをオン ④電子書籍を開く ⑤音量ボタンを押し読み上げ開始 |
最初は設定が煩わしいかもしれませんが、慣れれば簡単にできます。
目からだけでなく耳も使って記憶に残るようにしましょう。
読んだ内容を他人に教える
電子書籍の内容を記憶に定着させたいなら、人に教えるようにしましょう。
人に正しく伝えようと思うと深く内容を理解しようとするため、読書中の集中力が高まります。
例えば、今まで詳しく知らなかったチューリップを人に説明する場合、以下のような内容を調べるでしょう。
- 原産地はどこなのか
- いつ国内に入ってきたのか
- 花が咲く季節はいつなのか
- 植え方
- 水や肥料のやり方
人に説明しなければならないと思うと責任が生じ、自分自身が深く知識を得ようとします。
そのため、他人に教えることが前提で読書をする場合、知識の吸収も早くなり効果的に記憶できるでしょう。
電子書籍と紙の本のメリットやおすすめジャンルとは?
電子書籍と紙の本には、それぞれメリットやデメリットがあります。
得意分野や不得意分野もあるため、詳しく紹介していきます。
電子書籍 | 購入してすぐに読める 紙の本より安いことがある 何冊買っても手軽に持ち運びできる 保管場所を取らない |
紙の本 | 手元に残る 書き込みができる 読書に集中しやすい 記憶に残りやすい |
このように、メリットやデメリットがあるため、自身の好みや環境に合わせて選びましょう。
また、それぞれにおすすめのジャンルがあります。
電子書籍 | 週刊誌・雑誌 マンガ・ライトノベル 長編小説 |
紙の本 | ビジネス書・実用書 参考書・問題集 写真集や美術本 コレクション目的の本 古書 |
かさばるものや持ち運びにたいへんなものは、電子書籍がおすすめです。
一方で、内容を記憶しないといけないものや色彩を鮮明に見たいものは紙の本がよいでしょう。
古書はそもそも電子書籍になっていない場合があります。
電子書籍は持ち運びやすく冊数が多くなってもかさばらないなどメリットがたくさんありますが、あえて紙の本を持っていたい人もいるでしょう。
自分自身の好みや気持ち、生活習慣などを考えて選択していきましょう。
まとめ
本記事では、電子書籍が記憶に残りにくい理由として研究論文で発表されている内容や、電子書籍そのものの特徴による理由などを説明してきました。
しかし、書いて覚えたり繰り返し読んだりすると、記憶に残りやすくなります。
また、寝る前に読まないなど脳に負担をかけない工夫なども必要です。
ビジネス書や参考書などしっかりと知識を定着させたい場合は、紙の本がおすすめです。
一方で、イラストや写真が多いマンガや雑誌の場合は、電子書籍がよいです。
電子書籍か紙の本はどちらがよいのか、自分自身の目的や好みに合わせて使い分けしましょう。